海を渡る知の交歓
人類が直面する喫緊の課題に人文・社会科学が取り組み、「幸福の実現」という課題に貢献する人材を育成するにあたって、その教育・研究活動は、海外の提携校と共同で進めていくことが不可欠です。これまで本学は、数多くの大学と学術的な協定を締結してきました。本プログラムでは、そのネットワークを生かしながら、日本学を進めていく上で重要な拠点となる大学との関係を深化・発展させてゆきます。東北大学と連携大学とを結ぶ独自の日本学ネットワークとして「支倉リーグ」が結成され、活発な活動を展開し、成果を上げつつあります。
この名前は、進取の気性をあらわす代名詞ともいえる、仙台藩士、支倉常長に由来するものです。支倉は東北大学のある仙台に居城をもつ伊達藩の家臣であり、1613年、藩主伊達政宗の命を受け、遣欧使節として、メキシコを経由し、一路ヨーロッパを目指しました。東北の一藩主が、世界と文化交流を目指し使節を派遣したわけです。一行はローマ法王に謁見しただけでなく、イタリアでは支倉の肖像が描かれ、彼ら一行の礼節と見識は、ヨーロッパでも評判となりました。
この「支倉リーグ」のネットワークに日本学国際共同大学院を組み込むことで、「学生の交流」、「教員の交流」、「学術の交流」の加速化が期待されます。
実際、東北大学の「知のフォーラム」の支援を受けた「二一世紀の支倉常長プロジェクト」では、「支倉リーグ」加盟の大学から教員を招聘し、集中講義やワークショップ、またシンポジウム、懇談会によって学術交流が確実に進展していきました。日本学を通した知の「プラットフォーム」(Hasekura)の展開であり構築であるということができます。
東北大学では、2015年10月、フィレンツェ大学を会場に国際シンポジウム「学びの作法:対象としてのニッポン、方法としてのニッポン」(フィレンツェ大学との共催)を開催しました。このシンポジウムには、本学を含め9カ国16大学が参加、4部門32本の研究発表が行われました。この参加大学との間で学生交流・教員交流・学術交流を目的に締結されたのが、国際学術リーグ「支倉リーグ」です。
従来の大学間協定が一対一ないしは複数間での線的な協定であったのに対し、「支倉リーグ」の場合は、面的なネットワークを重視する点に際立った特徴があります。 その後も参加大学が増え、現在は、東北大学と欧米17カ国29大学のリーグとなっています。
「支倉リーグ」の今後
ヨーロッパの大学間の支倉リーグをもっと教職員や学生・院生が利用しやすいように充実させていく必要があります。それに加えて、プラットフォームは参加大学が増えれば増えるほど価値が増してくるものです。アジアの大学間ネットワークとして「支倉リーグ+」、アメリカの大学間ネットワークとして「支倉リーグX」、日本国内の大学ネットワークとして「支倉リーグJ」というように、「支倉リーグ」を拡充し、それぞれのネットワークを「日本学プラットフォーム」に組み込んでいきたいと考えています。そうすることで個々のブランディングが高まり、プラットフォームとして教育・研究に対する貢献度が大きくなります。
Hasekuraは、「支倉リーグ」を欧州だけでなくアメリカ、アジアの大学にまでその協定を拡大して、全世界規模で日本学の探究と創造を目指すプロジェクトです。