自国の発展に貢献するため
専門分野に経済学を選択。
中国の大学で4年間日本語を学んだ後、2010年4月から東北大学大学院経済学研究科の大学院生として研究生活をスタートさせました。日本語学科のカリキュラムの中に日本経済について学ぶ科目はあったものの、経済学に関する専門的な知識はほとんどない状態での進学でした。著しい発展を遂げた日本の高度経済成長期の経験を学んでみたい、日本の良いものを吸収し自国の発展に貢献したいという思いが、専門分野に経済学を選ぶ原動力となりました。
修士課程、博士課程を通じ、近世日本における労働力市場の歴史的な構造と特徴の解明に取り組んできました。研究のきっかけとなったのが、私の指導教員であった長谷部弘教授(2021年3月退職)の書かれた1枚の書評原稿です。それは、『割地慣行と他所稼ぎ-越後蒲原の村落社会史』(中村義隆著)という本についての書評でした。それを読み、近世の日本では他所稼ぎ、いわゆる出稼ぎがすでに行われていたことを初めて知りました。現在にいたるまで、中国では、農民工をめぐる問題(劣悪な労働条件、社会保障や職業訓練機会の格差など)が社会問題となっています。そうした問題につながる研究として、日本の近世期にはどんな労働力の移動があったのか、その規模、特徴を知りたいと考え、研究をスタートさせました。最初に取り組んだのが、新潟県西蒲原郡旧角田浜村・大越家文書の調査です。